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2017.02.04

◎脇役蒐集人◎

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脇役蒐集(しゅうしゅう)人について

それは、2015年の冬だった。

毎年楽しみにしている展示会へ出かけた夜。
いつもと違うことといえば、一冊の本を持っていたことだった。
その本は、私が日常的に集めていたお菓子の包み紙や絵の具の試し描き、
糸、文章の断片、用途のわからない金属片や押し花などを
心のままにコラージュした手作りの本だった。
分厚くて、もこもこの背表紙で、ちょっとだけ動物みたいな。

私は展示されていたコラージュの作品に魅了され、
作者であるその画家さんに、自分もコラージュが大好きであることを
話した。今年はこんな本を作ったんですよ、と言って。

そんなこと言うなんて今思い出してもどきどきするけれど、
緊張なんかよりワクワクと共感が勝っていた。
脇役蒐集人は、そのときに生まれた私の肩書き。

「こうやって集められた脇役のなかに、これから進む方向性が確かにある」

「新しい何かが生まれるとしたら、この中から生まれる」

「商業的な役割より先に、哲学のはなしをしないとはじまらない」

「主役も脇役も、両方出していくといい」

穏やかな語り口で、何個かのとても大事なことを言ってもらった。

脇役、も私にとっては大事なパーツだったから、
初めはそれらを脇役と呼ぶことにぼんやり違和感を感じていたのだけれど
この気持ちこそが、その画家さんの言う「哲学」なのかもしれない。

わたしはその日の御礼に手紙を書いた。

脇役蒐集人を、これからの自分の肩書きにしたいということも添えて。

この脇役蒐集人の文字は、そのときの画家さんの手紙から蒐集したもの。
そんなやりとりを経て、誰に発表するでもなくひっそりと、
この肩書きを名刺に入れ始めた。

何の役に立つかもわからないまま続けていた、
ほとんど誰にも見せてこなかった、言わばガラクタ集めに立派な名前が付いちゃった。
このことで一番励まされているのは、紛れもない私。

この文字を見るたびに
「明日がある」と、嬉しそうに三回言ってもらったこと、
「続ける、出し続けるのが大事だよ」と言ってもらったことを思い出す。

その後も相変わらず日々のかけらを拾い続けて、ちょうど一年。
2016年の冬の日に、大好きな場所で「脇役蒐集人」の発表の機会をいただいた。
この嬉しさと感謝を連れて、これからも小さな宝物の声に耳を傾けよう。
その気持ちをここに。

2017年 立春

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